理論編
測定原理を、具体的な事例をもとに分かりやすく解説します。
キャンバー角
ダミーホイールはアルミ合金製で、マグネット内蔵の平面測定面が設けられています。この測定面にデジタル角度計を装着することで、キャンバー角の測定が可能です。測定面はハブに対して極めて平行になるよう設計されており、サイズは62×42mmです。市販の多くのデジタル角度計が取り付けられます。
一方、ハブスタンドPLUSは鋼板製で磁性を持つため、そのままデジタル角度計を装着して測定が可能です。車両に対してできるだけ垂直に設置することがポイントとなります。

トー角
はじめに
ダミーホイールおよびハブスタンドPLUSは、トー角を「角度」ではなく「ミリ」で測定・調整します。
この方式の最大の魅力は、数字を見ただけで直感的に理解できること。さらに、多くの3Dアライメントテスターもミリ法で出力するため、計測結果の比較や再現性が高まります。
確かに、車種ごとに測定位置が異なるという特徴はありますが、本製品は完全オーダーメイドに近い仕様。お客様の車に最適化された状態でお届けできるため、この点はむしろ精度と信頼性を高める要素になっています。
さらに、ダミーホイールとハブスタンドPLUSのトー調整ツールは共用のため、両製品間でスムーズに使い回しが可能です。
また、他社製従来品をお持ちで角度法で管理されている方にも対応できるよう、トー調整ツールを除いた「ダミーホイール(ハブスタンドPLUS)+定盤」のみの組み合わせ販売も行っています。
設計段階から他社製従来品の併用を想定しておりますので、既存環境との互換性も安心です。
1. 車両トレッド幅の把握
まず、車両のフロント・リヤそれぞれの ホイール取付面間の幅(トレッド幅) を確認します。
計測方法は、3Dアライメントテスターなどによる実測でも構いませんが、最初はメーカー公表値を使用して問題ありません。
また、前後でホイールオフセットが異なる場合は、オフセットの情報 も合わせて必要となります。
例 | 車種 | フロント | リヤ | 前後差 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | N-ONE | 1305 | 1305 | 0 | ー |
2 | CIVIC TYPE R | 1625 | 1615 | 10 | ー |
3 | GT-R | 1680 | 1650 | 30 | オフセット計算 |

オフセット計算を含むこのように算出した 前後トレッド幅の差 を基準に、次の章で糸を張る作業へ進みます。
2. トー調整ツールへの糸のセッティング
トー調整ツールの使用方法
- ダミーホイール(ハブスタンドPLUS)を装着し、トー調整ツールを取り付けます。
- トー調整ツール中央のスケールを確認しながら、糸の支持ボルトの突き出し量を調整します。
- 糸を仮想的な車両中心線に平行になるように張っていきます。
※仮想的な車両中心線とは
前後トレッド幅の中心点を結んだ線のことを指します。
糸の張り方のポイント
- スケールの「50mm」を基準位置とします。(基準位置は任意ですが、左右で必ず統一してください)
- 車両の前後トレッド幅差に応じて、片側分をオフセットして糸を張ります。
具体例
- N-ONE(前後差なし)
前後のスケールともに「50mm」を通過するように糸を張ります。 - CIVIC(前後差10mm)
フロントは「50mm」、リアは「55mm」(=50 + 10 ÷ 2)を通過するように糸を張ります。 - GT-R(前後差30mm)
フロントは「50mm」、リアは「65mm」(=50 + 30 ÷ 2)を通過するように糸を張ります。


3. トー値の読み取り
トー調整ツールの左右スケールの外端から、トー値を読み取ります。トー値は左右の値の合計で求めます。

- トーゼロ:左右ともスケールが同値 → 差分ゼロ
- トーイン/アウト:基準から1.5mmズレ → 合計3mm

4. トー値の調整
タイロッドの伸縮によりトー角を調整します。
調整に伴い、調整幅が大きいと糸の通過位置(スケール中央)がズレてくることがあります。
その都度、支持ボルトの長さを微調整しながら、調整→読み取り→再調整を繰り返してください。
実践編
用意するアイテムと作業の流れをご紹介いたします。
実際の測定手順を動画にて
理論編で紹介した測定原理を基に、ダミーホイールを使用したアライメント調整手順を 動画にて解説します。
使用前の準備と必要ツール
- ダミーホイール本体
- レベリングパッド(定盤)
- トー調整ツール(トー計測バー+マグネットスケール)
- サポートバー(トー調整ツール付属品、今回は不使用)
- レーザー水平器
- デジタル角度計
- 水糸&おもり
- ステアリングホルダー(任意)

作業前の確認事項
- ジャッキアップ量を確認し、車両を水平にセット
- 作業スペースは濡れていないアスファルトやコンクリート舗装が望ましい
調整手順
- レベリングパッド設置
前後タイヤを取り外し、レベリングパッド設置。 - 水平出し
マグネットスケールを目印にレーザー水平器で高さを合わせ、角度計で傾きを0°に調整。 - ダミーホイール取付
取付基準穴を確認し、ダミーホイールを車両に装着。取付ナットのトルクはホイール規定の2/3程度でOK。 - ジャッキダウン・確認
車両をレベリングパッドに降ろし、各輪の位置が定盤中心付近にあることを目視で確認。 - 車高・キャンバー調整
ステアリング固定後、角度計で車高・キャンバー値を測定・調整。 - トー調整
トー調整ツールを装着し、ミリ単位で数値を読み取りながらタイロッドで微調整。(理論編参照)