TECHNICAL GUIDE / 01

ダミーホイールとは?できること・できないこと

ダミーホイールとは、タイヤ・ホイールの代わりに車両へ取り付け、1G状態で車両を支持しながら、アライメントの測定や足回りの調整を行うための工具です。

ホイールを取り外した状態で車両を支持できるため、アームなどの調整箇所へアクセスしながら、キャンバーやトーを確認できます。

サーキットでセットアップを変更する車両、足回りを頻繁に調整する車両、タイヤの内圧やホイールの状態に左右されにくい測定基準を設けたい場合に適しています。

ダミーホイールを車両へ装着し、1G状態で足回りを調整する使用イメージ
タイヤ・ホイールを外した状態で車両を支持し、測定と調整を行います。

通常のホイールとの違い

通常のホイールを基準にアライメントを測定する場合、ホイールリムやタイヤ側面などへ測定器具を当てます。

この方法では、ホイールの振れや傷、タイヤの変形や内圧、測定器具を当てる位置などが測定結果に影響します。また、ホイールを装着したままでは、アームなどの調整箇所へアクセスしにくい車両もあります。

ダミーホイールは車両のハブへ直接取り付け、製品上に設けた面や測定箇所を基準として使用します。タイヤやホイールを介さないため測定基準が明確になり、足回りの調整箇所にもアクセスしやすくなります。

ダミーホイールでできること

キャンバーの測定・調整

ダミーホイールに設けられた角度測定面へ角度計を当て、キャンバー角を確認します。

あらかじめ設計された面を基準として測定できるほか、ホイールを取り外した状態のため、キャンバーの調整箇所へ容易にアクセスできます。

トーの測定・調整

ダミーホイールにトー調整ツールを装着し、ハブを基準に水糸を張ります。

水糸とハブの距離を基準とし、車両を上から見たときのタイヤ前側・後ろ側に相当する位置の距離差からトーを確認します。

ダミーホイールを使用したキャンバーとトーの測定方法
製品上の測定面とトー調整ツールを基準に、キャンバーとトーを確認します。

1G状態での足回り調整

車両にダミーホイールを装着した状態で、アーム類の締め付けや車高、キャンバー、トーなどの調整を行えます。

ジャッキアップしてサスペンションが伸びた状態と、車重を受けた1G状態では、アームの位置関係やブッシュの状態が異なります。車両を1G状態で支持しながら調整箇所へアクセスできることは、ダミーホイールを使用する大きな目的のひとつです。

セットアップ変更後の再測定

車高やスプリング、アーム長などを変更した後、その場でアライメントを測り直せます。

特にサーキットでは、走行セッションの間にセッティングを変更し、その変化を同じ日のうちに確認できます。

ショップへ車両を移動して変更作業を行い、後日再び走行する場合、気温や路面などのコンディションが変化します。現場で測定・調整・再走行まで行うことで、セッティング変更前後の比較条件を揃えやすくなります。

どのような現場で使われるのか

ダミーホイールは、主に次のような環境で使用されます。

  • サーキットでセットアップを変更するレース車両
  • 足回りの調整を継続的に行うショップやチーム
  • 自宅ガレージに測定環境を構築する個人ユーザー
  • ホイールを外さなければ調整箇所へアクセスしにくい車両
  • 車両状態やセットアップ変更の履歴を管理したい場合

個人ユーザーが年に一度、基準値へ調整するだけであれば、設備の整ったショップへ依頼する方が合理的な場合もあります。

一方、足回りの仕様を頻繁に変更する、走行ごとに状態を確認する、サーキットで調整するといった場合には、自分たちで測定・調整できる環境を持つ意味が大きくなります。

ダミーホイールを使うメリット

ダミーホイールの価値は、ホイールを外した状態で車両を支持できることだけではありません。

車両のハブへ直接取り付けたダミーホイールに測定基準を設け、同じ車両、工具、設置方法、作業手順で測定することで、セットアップ変更前後の数値を比較しやすくなります。

また、調整箇所へのアクセスが容易になるため、測定と調整にかかる時間を短縮できます。作業手順を統一することで現場作業の属人性を小さくし、メカニックの作業負担を軽減する効果も期待できます。

測定に必要な周辺機材

トーやキャンバーを測定するには、ダミーホイールのほかに、角度計、水糸(釣糸)、レーザー水平器が必要です。

  • 角度計:キャンバー角の測定に使用
  • 水糸(釣糸):トーの測定に使用
  • レーザー水平器:定盤によって水平な設置面をつくるために使用

具体的な機材については、別途「アライメント測定に必要な機材・推奨購入リスト」としてまとめます。

測定時に確認したい条件

測定時には、可能な範囲で次の条件を確認・統一します。

  • 4輪を設置する面の高さと傾き
  • 燃料積載量
  • ジャッキアップ後のサスペンションの状態
  • ステアリング位置
  • 車両ごとの調整箇所
  • 測定位置と作業手順
アライメントの数値は、使用する設備や測定方法によって基準や結果に違いが生じます。特定の測定方法だけを絶対的な正解とするのではなく、同じ基準と条件で測定し、変更前後を比較できる環境をつくることが重要です。

ダミーホイールとハブスタンドPLUSの違い

どちらも、タイヤ・ホイールを外した状態で車両を支持し、足回りの測定や調整を行うための工具です。ただし、構造、仕様の決め方、測定基準、対応できる作業には違いがあります。

ダミーホイールは、車両や用途に合わせてPCD、穴数、ハブ中心高さなどを設定し、キャンバーやトーの測定基準を持たせた専用性の高い工具です。複数のPCDをひとつの製品にまとめる設計にも対応できます。

ハブスタンドPLUSは、より導入しやすい構成で、ホイールを外した状態での足回り調整やアライメント測定環境をつくる製品です。

どちらが適しているかは、使用車両、測定方法、調整頻度、必要な仕様、予算によって異なります。詳しい違いは、別記事「 ダミーホイールとハブスタンドPLUSの違い 」で解説します。

ダミーホイールの導入が向いているケース

次のような場合は、ダミーホイールを導入する効果を得やすいと考えられます。

  • 足回りの仕様を頻繁に変更する
  • サーキットで測定と調整を行いたい
  • 同じ日のうちに変更前後を比較したい
  • 調整箇所へのアクセスを容易にしたい
  • 測定・調整時間を短縮したい
  • メカニックの作業負担を軽減したい
  • 現場作業の属人性を小さくしたい
  • 車両の変化を継続して比較したい
  • チーム内で測定環境と作業手順を共有したい

一方、測定や調整を自分で行わず、測定頻度も非常に少ない場合は、ショップへ依頼する方が合理的です。

まとめ

ダミーホイールは、タイヤ・ホイールを外した状態で車両を支持し、1G状態でアライメントの測定や足回りの調整を行うための工具です。

その役割は、単に車両を支持することではありません。車両のハブから測定基準をつくり、調整箇所へアクセスできる状態で、測定と調整を繰り返せる環境を構築することにあります。

ダミーホイールは、製品によって測定基準の設け方や構造、仕様の決め方が異なります。次の記事では「ダミーホイールを選ぶときに確認したい7つの項目」として、比較・選定時に確認したいポイントを解説します。

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