ENGINEERING & STRUCTURE

アライメントツールは、測定基準をどう作っているのか

完成品の絶対的な測定精度は、外観だけでは判断できません。しかし構造を見れば、どこを基準とし、どの誤差を避け、何を優先して設計しているかは読み取れます。本記事では、本体構造とトー調整ツールを例に、その見方を解説します。

01 / HOW TO READ THE STRUCTURE

製造方法によって、管理できる形状と誤差が変わる

自動車部品も、すべてが同じ方法で作られているわけではありません。求められる役割や形状精度に応じて、鋳造、鍛造、切削、板金、溶接などが使い分けられています。

アライメントツールも同様です。車重を支持できることに加え、ハブ取付部や角度測定面を測定基準として使用できることが求められます。

工法の名称だけで優劣は決まりません。どの面を基準とし、その位置関係をどの工程で管理し、構造上避けられない誤差をどのように扱っているかを見る必要があります。

同じ用途の工具でも、本体構造によって位置関係を管理する方法と、発生し得る誤差要因は異なります。

02 / MACHINED FROM SOLID

一体削り出し構造|ダミーホイール

ダミーホイールでは、本体を一体で削り出す構造を採用しています。

ハブ取付面、トー調整ツールの取付面、キャンバー角の測定面を同じ材料上で機械加工できるため、それぞれの位置関係を厳密に管理できます。

複数の部品を介さないため、組立時の位置ずれや累積公差が本体形状へ入りません。また、十分な厚みを持つ材料から製作することで、車重を受けた際の変形も小さく抑えています。

ハブ取付面から各測定面までを、接合部を介さず同一部品上で加工します。

荷重を受けた状態でも、測定基準を維持する

設計荷重500kg、キャンバー角10度の条件を入力した解析では、キャンバー角に対する本体の変形量は0.03度でした。

これは一般的なデジタル角度計に見られる±0.2度級の測定精度より十分に小さく、通常の測定では、本体変形だけを独立した変化として判別することが難しい水準です。

単に車重を支持できるだけでなく、荷重を受けた状態でも測定基準となる形状を維持できるように設計しています。

500 kg

LOAD / 設計荷重

キャンバー角10度の条件で本体変形を解析。

0.03°

キャンバー方向の変形量

設計荷重500kg・キャンバー角10度における解析値。

設計荷重500kg、キャンバー角10度の条件において、解析上の本体変形は一般的なデジタル角度計の測定精度より小さい水準です。

03 / BOLTED PLATE STRUCTURE

プレート式ボルト組立構造|ハブスタンドPLUS

ハブスタンドPLUSでは、鋼板製のメインプレートと切削部品をボルトで組み立てる構造を採用しています。

ダミーホイールのように、ハブ取付面、トー調整ツールの取付面、キャンバー測定面をすべて切削加工で仕上げる構造ではありません。ひとつの鋼板に複数の役割を持たせることで、製造費と重量を抑えています。

そのため各測定面の形状管理は、一体削り出し構造と同等ではありません。それを前提として、構造の特性に合わせて測定位置と位置決め方法を設計しています。

変形の影響が小さい、ハブ付近で測定する

鋼板は、十分な厚みを持たせたアルミ削り出し部品と比べると、荷重を受けた際にたわみやすい構造です。

そこでキャンバー角は、変形の影響が大きくなるプレート外周ではなく、車両のハブに近い位置で測定します。変形の生じ方を踏まえ、測定への影響が小さい位置を使用しています。

ボルト穴ではなく、基準面で全長を決める

ボルト穴のクリアランスだけで位置を決めると、組み立てるたびに本体寸法が変わる可能性があります。

ハブスタンドPLUSでは、メインプレートのレーザーカットされた下面と、ローラー取付部品の切削された下面を同一の水平基準面へ当てて、全長方向の位置を決めています。ボルトは位置を決めるためではなく、決められた位置を保持するために使用します。

また、ハブへ取り付けるプレートを交換できるため、本体全体を買い替えずに異なるPCD、穴数、ボルト径などへ対応できます。

ボルト穴の隙間ではなく、2つの下面を同一の水平基準面へ当てて全長方向の位置を決めます。キャンバー角はハブに近い位置で測定します。

04 / WELDED STRUCTURE

溶接組立構造|全長方向の寸法をどう管理するか

溶接組立では、部品を接合する際の熱によって収縮と変形が生じます。

特に、本体の長手方向へ溶接箇所や溶接長が増える構造では、それぞれの溶接による収縮が本体全長へ影響します。治具上で部品を固定しても、溶接後に治具から外した際の変形や、溶接条件によるばらつきをなくすには追加の管理が必要です。

813アライメントツールズがダミーホイールとハブスタンドPLUSの本体に溶接を使わないのは、溶接強度の問題ではありません。測定基準に関係する本体全長を、溶接工程へ依存させないためです。

溶接長が増えるほど、完成状態の全長を溶接前の部品寸法だけで管理することは難しくなります。
  • 溶接による変形をどのように見込んでいるか
  • 完成後の全長をどこで測定しているか
  • 左右・4枚の寸法をどのように揃えているか
  • 溶接後に機械加工、修正、完成検査を行っているか

05 / TOLERANCE STACK-UP

累積公差|部品単体ではなく、測定位置までの経路を見る

製品を構成する各部品には、それぞれ寸法公差があります。複数の部品を組み合わせる構造では、部品単体の寸法差だけでなく、取付面、締結部、位置決め方法による差も、完成状態の位置関係へ影響します。

これが累積公差です。

ただし、製品全体の総部品点数だけを数えればよいわけではありません。アライメントツールで確認したいのは、車両のハブを起点として、実際の測定位置までに、いくつの部品と接合部を介するかです。

測定経路上にある、すべての位置関係が影響する

例えば、ハブからトーの読み取り位置までに複数の部品を介する場合、最終的な測定位置には次の要素が関係します。

  • 各部品の長さと厚み
  • 取付面の平面度と平行度
  • 穴位置と穴径
  • ボルト穴のクリアランス
  • 部品同士の着座状態
  • ねじの締め込み量
  • 組立時の位置ずれ
個々の誤差が常に同じ方向へ単純加算されるとは限りません。互いに打ち消し合う場合もあれば、同じ方向へ重なる場合もあります。重要なのは、部品と接合部が増えるほど、最終的な測定位置を決めるために管理すべき要素も増えることです。
総部品点数ではなく、測定基準から読み取り位置までに介在する部品、締結部、位置決め面を確認します。

高精度な部品を使うだけでは、測定系全体の精度は決まらない

測定器具そのものを精密に製作しても、その器具を取り付ける面の形状や、ハブに対する位置関係が管理されていなければ、測定系全体の基準は明確になりません。

例えば、形状を管理した測定器具であっても、板材の粗材面や、ハブ取付面との位置関係が管理されていない面へ取り付ければ、その取付面の形状差も測定経路へ含まれます。

そのため測定工具を見る際は、部品単体の材質や加工方法だけでなく、その部品をどの面へ、どのように位置決めして取り付けるのかまで確認する必要があります。

累積公差をなくすのではなく、管理できる経路にする

複数部品を使用する限り、各部品の寸法公差や接合部の影響を完全になくすことはできません。

一体構造にすれば接合部を減らせますが、トーの測定位置まで一体化すると、本体の大型化、ブレーキキャリパーとの干渉、製造費、重量、携行性といった別の問題が生じます。

そこで813アライメントツールズでは、測定経路上の部品を必要最小限にし、各部品の形状と寸法を管理したうえで、加工面と着座面によって位置を決めています。すべてを一体化するのではなく、測定に必要な基準を維持できる範囲でコンポーネントを分割しています。

その具体例が、サポートバー、トー調整バー、マグネットスケールから構成されるトー調整ツールです。

06 / TOE COMPONENTS

トーの測定基準を、ハブから読み取り位置までどう延長するか

トーを測定するには、車両のハブを起点として、タイヤの前端と後端に相当する位置まで測定基準を延長する必要があります。

ダミーホイール本体から測定位置までをすべて一体で削り出すことも技術的には可能です。しかし、ブレーキキャリパーとの干渉を避けながら、ハブから離れた測定位置まで一体化すると、材料使用量と加工量が大幅に増えます。本体の大型化は、着脱、運搬、保管にも影響します。

そこで813アライメントツールズでは、サポートバー、トー調整バー、マグネットスケールの3部品に分割し、測定基準に関係する形状と接続方法を管理しています。

部品点数そのものではなく、測定基準から読み取り位置までに介在する部品、締結部、位置決め面を見ます。

サポートバー|長さのばらつきを0.02mm以内に管理

サポートバーは、ダミーホイール本体の基準をトー調整バーまで伝える部品です。

4本の長さのばらつきを0.02mm以内に管理し、トー調整バーの取付位置に差が生じにくいようにしています。単なる支柱ではなく、ハブを起点とした測定経路の一部として寸法を管理しています。

トー調整バー|測定経路に粗材面を残さない

トー調整バーは、十分な厚みを持つ板材から切削加工で製作しています。

サポートバーが接する面は表裏ともに切削し、マグネットスケールを設置する面も切削加工によって仕上げています。測定経路上に板材の粗材面や、曲げ加工だけで成立させた面を残さず、各面の位置関係を機械加工によって管理できる構造としています。

各部品の加工精度だけでなく、接続される面と、その位置関係まで含めて管理します。

マグネットスケール|0.5mm単位で測定位置を合わせる

トー調整バーは、両端だけでなくハブ中心付近にもマグネットスケールを設置できます。マグネットによって任意の位置へ固定できるため、車両の前後オフセットや測定条件に合わせ、スケール位置を0.5mm単位で調整できます。

マグネットスケールは、1mm幅のメイン目盛と0.5mm幅の補助目盛で構成しています。前側と後側をそれぞれ0.5mm単位で読み取る場合、前側+0.5mm、後側−0.5mmで前後差は1.0mmです。18インチ相当の測定径を457.2mmとすると、角度換算で約0.125度になります。

前後差:0.5 −(−0.5)= 1.0mm
tan⁻¹(1.0 ÷ 457.2)≒ 0.125°

締結による変形を、トー測定区間へ入れない

測定精度だけでなく、着脱するたびに同じ状態へ戻せる再現性も重要です。

ハブボルトへ取り付ける構造では、締結によって生じる軸方向の変形が、トー調整バーの取付位置まで伝わる可能性があります。締結部と測定部の位置関係が同じ経路上にあるためです。

これに対して、813アライメントツールズのサポートバーは、本体側のおねじとサポートバーの着座面によって位置を決めます。

サポートバーが本体へ着座した後の締結による伸びはねじの首下部に生じるため、サポートバーの基準長さは維持されます。締結による変形をトー測定区間へ入れず、トー調整バーの取付位置を保つ構造です。

締結による軸方向の変形を首下部で受け、サポートバーからトー調整バーまでの基準長さを維持します。

07 / WHAT THE STRUCTURE TELLS US

構造から分かること、分からないこと

構造だけを見て、完成品の絶対的な測定精度を断定することはできません。材料や工法だけでなく、実際の加工精度、組立、検査、使用環境も測定結果へ関係するためです。

一方で、構造を見れば、どのような誤差要因が存在するか、何によって位置を決めているか、基準から測定位置までにどの部品と締結部を介するかは読み取れます。

  • 車両のどの面を測定の起点としているか
  • 測定位置までに、いくつの部品と締結部を介するか
  • ボルト穴、粗材面、加工面のうち、何によって位置を決めるか
  • 荷重や締結による変形を、どこで受け、どこで測定するか
  • 着脱のたびに同じ位置へ戻る構造になっているか
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